
脂質異常症
脂質異常症
血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが乱れた状態を指します。具体的には、「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールや血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が必要以上に増えるか、または「善玉コレステロール」であるHDLコレステロールが減ったりする病態です。コレステロールや中性脂肪は、体の機能を維持するために適切な量が必要不可欠ですが、その中でもサイズの小さい超悪玉コレステロール(sd LDL)は血管壁に侵入しやすく、プラークと呼ばれる脂肪の塊を形成し動脈硬化や血管の詰まりに影響をしていることが明らかになっています。
空腹時に血液検査を実施し、LDLコレステロール140mg/dL以上、トリグリセライド150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満となっている場合、脂質異常症(高脂血症)の確定診断となります。当院では定期的にCAVIや頚動脈エコー等で動脈硬化の評価も行っております。
脂質異常症は、自覚症状がほとんどないため、多くの場合、健康診断の血液検査で偶然発見されます。
特に、LDLコレステロールが高いと指摘された場合は、家族性高コレステロール血症の可能性も考えられます。この疾患は遺伝性のもので、250〜300人に1人という比較的高い頻度で見られます。その際は、ご家族やご兄弟を含めた精密検査が必要となる場合があります。
当院では、必要に応じて昭和医科大学病院の脂質異常症遺伝子検査外来とも連携しており、より専門的な検査や診断が必要な場合もスムーズにご案内できる体制を整えています。ご自身の脂質の値にご不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
当院では管理栄養士による栄養指導のもと行います。
週に合計180分以上を目安に、1日あたり30分程度の有酸素運動をお勧めします。
これらの食事・運動療法をベースに薬物治療をご提案していきます。
LDLコレステロール値が38.7mg/dL低下するごとに、心血管死・心疾患・脳卒中等の主要血管イベントのリスクを21%減少させることが海外データで示されています。
心血管疾患を発症していない一次予防の患者さん、心血管疾患(心筋梗塞等)の既往のある二次予防の患者さんともに有用です。
LDLコレステロールを低下させる薬の一つである注射製剤PCSK9阻害薬エボロクマブによってLDLコレステロールを低下させる事(投与前92mg/dL→投与後約30mg/dL)で、心血管死・心疾患・脳卒中等の主要血管イベントのリスクを有意に減少させました(N Eng J Med. 2017, 376:1713-1722.)。
冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症等)を持つ患者さんを対象に、LDLコレステロール値を非常に低下させる事(LDLコレステロール55mg/dL未満)で、すでに血管内にできてしまった動脈硬化のプラークを減少させました(JAMA 2016 Dec 13;316(22):2373-2384. )。
大規模な臨床研究(FOURIER試験やGLAGOV試験、CTT Collaborationの分析など)から、LDLコレステロールをしっかりと下げることが、主要血管イベントのリスクを大きく減らすことにつながる事が明らかになっています。
コレステロール値を適切に管理することは、より長く、健康で活動的な生活を送るための大切な一歩となります。
当院では、あなたに合った最適な方法でLDLコレステロールの管理をサポートし、安心して治療に取り組んでいただけるよう努めています。一緒に、より健やかな未来を目指しましょう。